長崎の葬式におけるしきたりとは?地域ならではの特徴を解説

公開日:2026/03/02
しきたり

長崎県は対馬・壱岐・五島列島など5地域に分かれ、さらに2018年には「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されるなど、キリスト教との関わりも深い地域です。こうした歴史や地理的背景から地域ごとに文化や葬儀の風習が異なる点について、本記事で詳しく解説します。

長崎県の葬儀について地域ごとに紹介

長崎県の葬儀はおおむね西日本の流れに沿っていますが、島嶼部が多い土地柄から地域ごとの違いが色濃く見られます。通夜は近親者中心で営まれ、大規模な通夜振る舞いはあまり行われません。

島原市周辺の風習

島原市周辺では、近隣住民が米や現金を差し入れる「御目覚まし」という風習があり、故人や遺族への祈りが込められています

対馬地域の風習

対馬地域には、故人の衣服を裏返して吊るし、七日間水をかけ続ける「水かけぎもん(逆さぎもん)」という習慣があり、死の穢れを洗い流す意味を持つとされています。

火葬のタイミングは地域差がある

火葬のタイミングも地域差があり、県内では葬儀後に火葬する後火葬が主流です。ただし、雲仙市や島原市、南島原市周辺では葬儀前に火葬する前火葬が行われ、遺骨で葬儀を行う「骨葬」となります。お盆には長崎市周辺で「精霊流し」が行われ、華やかな精霊船を爆竹とともに曳き回す独特の風習があります。

長崎県のお墓について

また、長崎県のお墓は区画が広く、囲いや門、ベンチや石のテーブルを備えるなど長時間滞在を前提とした造りが特徴です。墓前で飲食や花火を行う習慣もあり、中国由来の影響が見られます。墓石横に土神様を祀ることや金文字の使用などにも大陸との深い歴史的つながりが表れています。

長崎県の葬儀の伝統的なしきたり

長崎県は九州の他県と同様に浄土真宗の門徒が多い一方で、天台宗や真言宗などの密教系、曹洞宗や臨済宗といった禅宗系の寺院も多いです。そのため、宗派の多様性を背景に伝統的な仏式葬儀のしきたりが今も各地に残されています。葬儀の流れ自体は西日本に共通する形式が中心ですが、土葬時代の名残をとどめる儀礼も見られる点が特徴です。

出棺時のしきたり「天冠(てんかん)」

出棺時のしきたりとして、平戸市周辺では白い三角巾「天冠(てんかん)」を額に付ける風習があります。天冠は死装束の一つで、閻魔大王の前に出る際の正装ともいわれる死者の象徴です。遺族も同じ天冠を付けることで「あの世との境目まで見送る」という意味を表すと伝えられています。また、故人が生前使用していた茶碗を出棺時に割る「茶碗割」も広く行われており、現世への未練を断ち切る願いが込められています。

棺や参列者が回る「棺回し」も特徴的

さらに、棺や参列者が回る「棺回し」は、故人が戻る場所を見失い、迷わず浄土へ旅立てるようにとの思いから行われる儀式です。かつて土葬が主流だった時代に行われた葬列「野辺送り」も、現在では葬儀場から霊柩車までの短い距離ながら実施されることがあります。

「三日参り」の伝統も長く続けられている

加えて、葬儀翌日に菩提寺を訪れて法話を聞き、今後の仏事を相談する「三日参り」も比較的多く続けられています。このように、長崎県では今なお伝統を大切にした葬送文化が息づいています。

長崎県ではキリスト教の葬儀も多い

長崎県は、かつて日本におけるキリスト教布教の中心地として栄え、南蛮貿易の拠点でもあった歴史を持つ地域です。現在もキリスト教徒が比較的多く、他県に比べてキリスト教式の葬儀が行われる機会が多いことが特徴です。象徴的な存在として知られるのが、長崎市にある大浦天主堂で、長崎とキリスト教の深い関わりを今に伝えています。

長崎県内のキリスト教徒の割合

統計によると、長崎県内のキリスト教徒は2005年には約7万8千人でしたが、2019年には約6万3千人に減少しています。ただし県全体の人口も減少しているため、人口に対するキリスト教徒の割合は変わらずおおむね4%前後です。また、県内のキリスト教徒の多くはカトリック信者であるといわれています。

香典の表書きに要注意

キリスト教式葬儀では、香典の表書きにも注意が必要です。カトリックでは「御ミサ料」と記す場合がありますが、プロテスタントでは用いません。一方で「お花料」や「御霊前」は両宗派で使用可能とされています。封筒は十字架や百合の花が描かれたものを選び、蓮の花が印刷された仏式用の不祝儀袋は避けるのが適切です。

キリスト教におけるお悔やみの言葉について

また、キリスト教では死を「永遠の命の始まり」と捉えるため、強い悲嘆を前面に出すお悔やみの言葉は控えめにします。「安らかな眠りをお祈りいたします」といった表現が無難とされています。

まとめ

長崎県の葬儀は、西日本の一般的な流れを踏まえつつも、島原の「御目覚まし」や対馬の「水かけぎもん」、地域によって異なる前火葬・後火葬の風習など、土地ごとの歴史や信仰を色濃く反映しています。さらに、広い墓地区画や精霊流しに見られる中国文化の影響、そしてキリスト教が根付く地域ならではの葬儀形式や香典の作法など、多様な背景が共存している点も大きな特徴です。仏教とキリスト教、そして大陸文化が交差する長崎だからこそ育まれた葬送文化は、単なる儀礼にとどまらず、人々の祈りや地域の歴史を今に伝える大切な営みといえるでしょう。

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